シティ・モビリティ

自動運転サービス支援道路の実証実験はじまる
~自動運転トラック実現には検証と整備のスピードアップを~

上級研究員 水上 義宣

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2025年3月3日から新東名駿河湾沼津SA~浜松SA間で自動運転トラックを対象とした自動運転サービス支援道路の実証実験が始まった。

≪図表1≫実証実験に参加する自動運転トラック

大型トラックは急停止、急操舵が困難であり、自動運転トラックが高速道路で車線変更をするためには、右後方車両と100~130mの車間距離が必要1であるが、現実の高速道路における分合流や路上落下物等の回避では、余裕をもった車線変更ができるとは限らない。

このため、車両のセンサーだけに頼るのではなく、道路側でも分合流車両や落下物等の検出を行い自動運転自動車に通知するとともに、運転手が運転している通常の自動車に対して分合流に車間距離が必要な自動運転トラックが走行してくることを知らせる設備等を整備し、自動運転自動車の運行をより安全、円滑にしようという計画が自動運転サービス支援道路である。≪図表2≫

≪図表2≫自動運転サービス支援道路のイメージ

今回の実証実験では、平日22時から翌朝5時までを自動運転車優先レーンの設定時間帯とし、自動運転トラックの開発をしているT2とRoAD to the L4 テーマ3コンソーシアム3が新東名駿河湾沼津SA~浜松SA間の上下線で自動運転トラックを走行させる。2025年12月までを目途に自動運転サービス支援道路の有用性や運用、課題を確認する。実験が順調に進めば2025年度以降に東北道佐野PA~大谷PA4、2026年度以降には関東~近畿を中心としたさらに多くの区間での実験5を見込んでいる。

国は2023年4月に策定したロードマップにおいて、自動運転トラックを関東~関西間で、2026年度に大手物流事業者を中心に10~50台程度、2030年度以降には上下各300台ずつ走行させるとしており、さらなる拡大は2035年度以降と見込んでいる≪図表3≫。今回の実験スケジュールも概ねこの方針に沿ったものと考えられる。

≪図表3≫レベル4自動運転トラックの社会実装のステップ

一方で、トラック運転手不足を背景に自動運転トラックへの期待は高い。2030年度トラック輸送力は約34%不足すると試算7されており、自動運転トラックの早期実現が求められている。今回実験が行われる新東名は1日約27,000台の大型車が通行しており、上下各300台の自動運転トラック運行という目標は輸送需要と比して少ない。また、全国的にはトラック運転手は人口減少の影響から東北、北陸、九州といった地方で不足するという試算8もあり、通行台数が多くトラック運転手不足が懸念される東北道等でも自動運転トラックの需要は高いと考えられる。

≪図表4≫高速道路の大型車通行台数

今回の実験にも参画しているT2は運転手が乗車する必要がないレベル4での自動運転トラックの運行を2027年から実現し、2031年には全国で2,000台規模の事業展開を目指していると報道されている10。T2は運転手が乗車した状態での自動運転にあたるレベル2での走行を重ねており、今回自動運転サービス支援道路の実験が行われる駿河湾沼津SA~浜松SA間についても2024年6月21日に運転手が介入することなく走行しきったと発表11している。今回の実験にあたってT2の國年賢事業開発本部長は「晴天時の6月21日では既に運転手が介入せずに走行しているが、今回の実験では、(道路設備からの支援により、様々な環境でも)より安定して自動運転走行できることを期待する。」12とした。より円滑で安全な走行を実現し、実用的な運送手段となる自動運転トラックを早期普及させるには、自動運転を支援する路車協調設備等の整備が有用と期待される。

国土交通省の北城崇史ITS推進室課長補佐は「実験を重ねて有用性や課題を確認し、実用化に向けた取組みを進めたい」13としたが、トラック運転手不足を背景とした需要に比べ、政府の自動運転支援道路の整備に向けたスケジュールは慎重である。

また、今回の実証実験は有用性や課題を確認することが目的で、整備に向けた費用等は検証項目に含まれない14。今後は、技術検証と並行して、費用も含めた設備整備に向けた課題の確認や、有用性に応じた受益者負担の高速道路料金等を含め、整備に必要な制度を検討する等の議論をしていくことも必要だろう

  • 国土交通省(2024年6月27日)「第1回自動運転インフラ検討会資料6 RoAD to the L4 テーマ3 について 自動運転トラックの社会実装に向けた現状と課題」p.12
  • 国土交通省(2024年6月27日)「第1回自動運転インフラ検討会資料5 高速道路におけるインフラ支援について」p.3
  • 豊田通商を事務局に大型トラックメーカー、大手物流事業者等が参加するコンソーシアム
  • 国土交通省(2024年10月9日)「第2回自動運転インフラ検討会資料1 高速道路および一般道における
    自動運転の取組について」pp.10-13
  • 国土交通省(2024年6月27日)「第1回自動運転インフラ検討会資料5 高速道路におけるインフラ支援について」p.9
  • 経済産業省・国土交通省自動走行ビジネス検討会事務局(2023年4月28日)「自動走行の実現及び普及に向けた取組報告と方針version7.0参考資料」p.83
  • 国土交通省・農林水産省・経済産業省 第3回 持続可能な物流の実現に向けた検討会(2022年11月11日) 資料1株式会社NX総合研究所「「物流の2024年問題」の影響について(2)」p.10
  • 野村総合研究所(2023年1月19日)「トラックドライバー不足時代における輸配送のあり方 ~地域別ドライバー不足数の将来推計と共同輸配送の効用~」p.13
  • NEXCO東日本・NEXCO中日本・NEXCO西日本(2019年1月30日)「国土交通省 第2回 新しい物流システムに対応した高速道路インフラの活用に関する検討会 資料1-1 高速道路における大型車の利用状況」p.3
  • トラックニュース(2025年2月7日)「T2、セイノーHD、日本郵便/自動運転トラック幹線輸送、事業化に向け本格スタート
  • T2(2024年6月24日)「T2、新東名高速道路(駿河湾沼津 SA-浜松 SA 間 116km)において連続自動走行成功(ドライバー未介入)
  • 当社取材による
  • 当社取材による
  • 国土交通省北城崇史ITS推進室課長補佐への当社取材による
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