企画・公共政策

エッグショックがこの夏再びやってくる

上級研究員 小池 理人

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 鶏卵の卸売価格が大きく上昇している(図表1)。鶏卵価格はこれまでも飼料価格高騰等を背景に上昇傾向にあったが、鳥インフルエンザの流行が価格上昇に拍車をかけている。足もとでの卸売価格は315円にまで上昇しており、エッグショックと言われた2023年の価格上昇時のピークである350円に迫る勢いだ。
 卸売価格が小売価格に波及するまでには時間がかかる。鶏卵の卸売価格と小売価格とを比較すると、前回の鶏卵価格上昇時には、卸売価格のピークから5か月程度のラグをもって小売価格がピークを迎えていた(図表2)。この傾向が今回にも当てはまるのであれば、7月頃には消費者が手に取る卵の価格も大きく上昇することになる。
 卵価格の上昇によって懸念されるのが、体感物価の上昇だ。消費者物価指数における鶏卵のウエイトは全体の約0.3%であり、統計上の影響は小さい。しかし、購入頻度の高い生活必需品の価格上昇は、消費者に可処分所得の減少を印象付け、消費の減退を引き起こす。景気ウォッチャー調査をみると「食品を中心とした物価の上昇が続いており、客が必要な商品以外は買物を控える傾向がみられる」や「食品やガソリンなどの価格上昇により、客の購買意欲が低下し、必要な物しか購入しなくなっている」といったコメントが目立ち、食品価格の上昇が消費者の買い控えが生じている様子が示されている。
 食品価格を巡っては米価の動向が話題の中心であるが、政府による備蓄米の放出が決定されたことにより、過熱感が沈静化されることが期待されている。そうした中において、鶏卵価格の上昇は新たな懸念事項となる。鶏卵の小売価格上昇が顕在化していくことで、消費者の体感物価が再び押し上げられ、消費意欲が減退する展開に対しても注意を払う必要があるだろう。

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