長崎スタジアムシティが開業
~スタジアム・アリーナをハブにした街づくりに注目が集まる~
2024年10月14日、長崎市から徒歩10分の造船所工場跡に、サッカースタジアムを中心とした「長崎スタジアムシティ」が開業した。長崎県佐世保市の著名企業である(株)ジャパネットホールディングスが、通信販売事業に並ぶ二つ目の柱として掲げている「スポーツ・地域創生事業」の一環として、総事業費1,000億円を投じて完成に導いた。この長崎スタジアムシティがもたらす経済効果は大きく、約1万3千人の雇用創出と年間約850万人の集客を見込んでおり、その経済効果は開業から1年間で約963億円と試算されている一大プロジェクトである。
長崎市でこのような大規模なスタジアム開発が進む背景の一つが人口減少だ。長崎市は2022年7月には初めて人口40万人を下回り、2050年には約28万人まで減少すると見込まれている。長崎市ではこの人口減少の影響を抑えるべく、2022年の西九州新幹線の部分開業をきっかけに、長崎駅前を中心に「100年に1度」とも言われる再開発を進めている。長崎駅東口には、2023年11月に「アミュプラザ長崎新館」が、2024年1月には「長崎マリオットホテル」が開業したほか、2026年には駅前に多目的広場が設置され、交流の場として整備される。また、長崎駅西口には、2021年11月にイベント・展示ホール・コンベンションホールを持つMICE施設「出島メッセ長崎」が駅直結で整備されている。長崎スタジアムシティもこの再開発事業の一環として行われており、今後の経済効果に期待が寄せられている。(長崎駅の再開発の状況は《図表1》参照。)
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この長崎スタジアムシティは、サッカースタジアムを中心に、アリーナ、ホテル、商業施設、オフィスビルなどから構成される複合施設で、約7.5ヘクタール(東京ドーム1.5個分)の敷地面積がある。
中心となるスタジアムは「V・ファーレン長崎」のホームとして、アリーナはプロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」のホームとして、それぞれ使用される。特にアリーナは、スポーツのほかコンサートや展示会といったイベントにも対応可能な可変型のアリーナとなっており、スポーツ以外の用途に対応するよう設計段階から工夫がされている。ホームスポーツチームの本拠地としての利用をベースにしながら、アリーナを活用したライブなどの音楽イベントやスケートイベントといった様々なコンテンツの提供による収益性・施設稼働率の向上を狙っていることがわかる。
また、併設されるホテルでは、客室、宴会場、レストラン、(宿泊者のみ利用できる)プールやサウナなどからスタジアムを臨むことができ、サッカーやコンサートを楽しむことが可能だ。そして、商業施設ではスタジアムを取り囲むように県内外から約90店舗(開業時)が集い、イベント観戦や宿泊の有無に関わらず利用できる。一方、オフィスビルでは長崎大学の情報データ科学分野のサテライトキャンパスが大きな特徴である。同じオフィス棟に入居する様々な企業と大学のコラボレーションの場としての役割が期待されている。このように、スタジアムやアリーナが中心となり、地域内外の多様なプレーヤ-が集うハブとして、長崎スタジアムシティが機能していることが伺える。長崎スタジアム「シティ」の名が表す通り、この一帯が新たな「まち」として機能していることがわかるのではないだろうか。(長崎スタジアムシティの様子については《図表2》参照。)
長崎スタジアムシティは開業から3か月を迎えるが、動員数は想定以上とされるなど、順調に推移しているという。路面電車駅や路面バスからのアクセスがわかりづらいといった、いくつかの課題が指摘されているものの、今後に期待する声は非常に大きい。今後長崎市のまちづくりにどのような影響を与えていくか、注視していく必要があるだろう。
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