年賀状離れを勢いづける85円はがき

上級研究員 小池 理人

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 年賀状離れが続いている。日本郵便の発表によると、2025年用の年賀はがきの当初発行枚数は10.7億枚(前年比▲25.7%)となっており、ピークであった2004年用の44.6億枚から、転げ落ちるように発行枚数が減少している(図表1)。電子メールやSNSの普及、SDGsの観点からの環境配慮等により、年賀状をやめる個人や企業が増えていることが要因であるとみられるが、更に追い打ちをかける要因がはがきの大幅値上げだ。はがきの料金は過去にも値上げが繰り返されてきたが、2024年10月からは人件費や燃料費等の高騰を受けて、63円から85円へと大幅な値上げがなされた。年賀状の利用が停滞する中での大幅値上げによって、更なる需要減少が見込まれ、当初発行枚数も相応に抑制される形になったものとみられる。
 文化としての年賀状が衰退していくことを憂える声が聞こえる一方で、年賀状の減少は必ずしも悪いことであるとは言い切れない。人手不足が進む昨今、業務量の減少とそれに伴う他業務への移行はポジティブに捉えられるからだ。日銀短観の雇用人員判断DIをみると、運輸・郵便については全産業よりも人手不足が深刻化している(図表2)。年賀状については、年末に仕分けバイトの募集が大々的になされるなど、多くの人員が割かれることになる。第3次産業活動指数をみると、運輸・郵便業のみならず、小売業や宿泊・飲食サービスなど、労働集約的な産業においては年末に繁忙期が訪れていることが示されている(図表3)。年末においては、労働需要が増加するのみならず、昨今話題の年収の壁によって労働供給が細る可能性も指摘されており、労働需給が逼迫しやすい時期となっている。年賀状の減少は少なからず、生産性の高い分野への労働力の分散に資するだろう。人的資源や環境資源の重要性は高まっており、年賀状が減少していくことは時代の必然であると考えられる。

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