日本経済新聞社「日経ヴェリタス」プロが解説のコーナーに、新添上級研究員の連載・第5回(最終回)「自動運転、開発競争を追う/事故に備える保険が必須、「開発責任」問いにくく(2024年9月29日付)」が掲載されました。
日本経済新聞社「日経ヴェリタス」 プロが解説 のコーナーに、上級研究員: 新添麻衣 の連載「自動運転、開発競争を追う」の第5回(2024年9月29日付)が掲載されました。
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第5回は、「事故に備える保険が必須、「開発責任」問いにくく」です。
―第5回では、自動運転車による事故時の責任の問題を取り上げました。
■民事責任と自賠責保険・自動車保険で守られる仕組み、製造物責任法(PL法)の問題点
■自動運転ユーザーに新たに設けられたメンテナンスなどの義務と違反時の行政処分(違反点数、反則金など)
■刑事責任を巡る問題 などを取り上げています。
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⇒https://www.nikkei.com/compass/content/NIRKDBDGKKZO8370111026092024K14900/preview
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掲載内容の一例として、民事責任については、2017年度に国土交通省で研究会が開催され、2018年「自動運転に係る制度整備大綱」に当時の整理と残課題がまとめられました。
ー国交省は、強制保険である「自賠責保険」とその根拠法となる「自賠法(自動車損害賠償保障法)」を所管しています。
ー当時の整理は、2025年頃までをターゲットとしたもので、当面は、大多数の手動運転の自動車の中に、レベル3やレベル4の車両が混在してくる過渡期であることを前提としていました。
― 自賠責保険も自賠法も、「人間のドライバーが事故の責任を負う」というような書き方にはなっていません。
「運行供用者」が責任を負うという考え方になっています。
■「運行供用者」とは、自動車の運行を支配し、運行によって利益を享受している者を指します。
■レベル3の車両を通勤やレジャーに使用しているマイカーオーナーや、
レベル4の車両を用いてタクシー事業や配送事業を営む事業者は、いずれも運行供用者に該当すると考えられます。
■そのため、引き続き、自賠責保険・自賠法の枠組みを自動運転車に対しても適用することが可能、と結論付けられました。
ー今年5月、デジタル庁の「AI時代における自動運転車の社会的ルールの在り方検討サブワーキンググループ」から報告書が発行されました。ここでも、民事責任については、2017年・2018年の整理が適用可能と整理されています。
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「自動運転車の事故なのだから、車のせい=メーカーの責任ではないのか?」という疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。
ー事故原因の究明と真に責任を負うべき者を明らかにすることは、もちろん重要です。
しかしながら、高度なシステムやセンサーを搭載した自動運転車の事故原因の調査は一筋縄ではいかず、
製造物責任(PL)を問うとなると、裁判を通じて、結論を得るまでにさらに長い時間を要することが想定されます。
ーその結論が出るまで、事故の被害者が治療費などを自己負担で支払い続ける状況を放置しておくことはできません。
前述の自賠法・自賠責保険の仕組みは、迅速な被害者救済(保険金支払い)を行うために存続が必要なものです。
つまり、事故対応の第1段階としての被害者救済枠組みなのです。
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ーその後、事故対応の第2段階として、PL等の真の事故原因の追究は行われます。
■ただし、前述のとおり、決着までには年単位の時間を要する可能性があること
■PL法上の製造物は「有体物」に限られるため、完成車やセンサーなど特定の部品メーカーの責任は追及できる一方で、
「無体物」である自動運転のソフトウェアやAIの開発企業、データ提供サービスを行う事業者などのPLは問えないこと
■PL法上の「欠陥」は、製品の引き渡し時に存在したものかどうかで判断されるため、
自動運転ソフトウェアの更新プログラムのバグにより、想定外の挙動があって事故が起きたケースなどではPLを問えない可能性があること
など、法律がデジタル製品の特性に追いついていないことによる課題も残されています。 (新添)